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映画「グリーンブック」感想・考察【中編】

2019年4月現在公開中、アカデミー賞3部門受賞作品「グリーンブック」を鑑賞してきました。

前編にて

・あらすじ

・「グリーンブック」とは?

・全体的な物語のいいとこ

・主人公の魅力

というようなところをざっくり表面を撫でるように語らせて頂きました。誰かの興味は引けていたかな…?観てみようと思って頂けたでしょうか?

中編、後編ではネタバレを含め、がっつり感想を述べたいと思います。本編のエピソードにもふれるのでまだ観ていない方は要注意!

 

 

 

 

 

(注意!以下ネタバレ含みます)

 

 

 

 

 

はい、ではここからはただただ私が好きだったシーンやセリフ・「うまいな…」と思ったポイントについてふれていきたいと思います。

 

 

 

・前編でもふれましたが、まず主人公トニー・リップがうまい!!良い!!

 

役者さんの演技力という意味ではもちろんですが、キャラクターの作りがうまいなあと思いました。実在の人物だったという強みはあると思いますが、本当に生きた人間みがあるというか、欠点が多く見られながらにくめないキャラクターの作りがうまい。

キャラの良さついては前編でも語ったので多くは語りませんが、こういうどこにでもいそうなにくめない良いやつが、ごく自然に差別をしているというのが本作の導入において重要なのだと思います。

私達は道徳の授業なんかでなんとなく「差別はいけないこと」と認識していますが、差別そのものへの認識は薄いのではないかなあと思います。

 

「差別をするような人ってどんな人?」「プライドが高くて傲慢で攻撃的な人?」

「差別ってどういうこと?」「敵意を向けること?悪意を向けること?」

 

本音を申しますと私はこんな感じでした。差別を肯定する気はもちろんさらさらありませんが、具体的イメージがあまりにもわかず、遠い印象でした。

少なくとも私と、私の身近な人で差別をすることはないだろう、というくらいの認識です。

 

そんな私にぶっこまれたのが本作の主人公、トニー。

こんなどこにでもいそうな男が自然に差別をしていること、その差別のし方が露骨な敵意や悪意を示すことではなく、日常の中でひっそりと行われていることが私にとっては衝撃であり、同時に納得しました。

なるほど、差別とはこのようにひそんでいるのか、と。

 

このように、視聴者が好感を抱いて見られる主人公を通して差別がわかる作りになってるのがよくできてるなと思いました。

そしてこの差別を通しながらも、やっぱりトニーのことをにくめない…なんだかんだでいいやつなんだというのが感じられるのです。

いやー…いい主人公です。

 

 

 

・差別を受ける側…ドクター・シャーリーの葛藤の描写

 

もう一人の主人公、孤高な天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー。

彼はトニーとは何もかもが正反対、暮らしている環境も性格も違います。ガサツで粗暴なトニーに対し、ドクター・シャーリーは上品で物腰のやわらかな男性でした。無学なトニーに対しドクター・シャーリーは音楽のみならず心理学、典礼芸術の博士号を取得し、複数の言語を話すことができました(だからこそ、異国語の差別発言にも気づいてしまう場面もあるのですが…)。

そしてトニーはドクター・シャーリーに対しても黒人差別をしてしまいますが、ドクター・シャーリーはそれに気づきながらも、トニーのトラブル解決力を買います。

 

ドクター・シャーリーは作中数々の黒人差別にぶつかります。最初のトニーのささやかな言動に始まり、南部への旅で各方面から、まさかの警察からも過激な差別を受けます。

差別意識をもったトニーを雇い、差別の色濃い南部へ赴き、黒人が一人で出歩いたり夜中に外出するのは危険と知りながら町へと繰り出すドクター・シャーリー。なぜ彼はそんなことをするのか?視聴者の抱く疑問をトニーが作中代弁してくれます。

 

その疑問への答えは少しずつ、物語の後半に明かされます。彼はあまりにも孤独でした。彼が抱えている孤独は「黒人差別」だけではなかったのです。

 

雨の中彼が訴えた言葉は鮮烈でした。「いったい自分は何者なんだ?」

 

黒人でありながら、皆の言う黒人らしさを持たず、けれど絶対に白人にはなれない。どちらにも属すことができず、どちらからも、どこからも偏見をもたれてしまう。

穏やかなたたずまいでありながら、胸の奥には苛烈な孤独を抱いていました。

彼ほどの孤独を抱えた人間はそうそうどこにでもいるものではない(いてほしくない)と思いますが、ですがこの「己が何者なのか、自分はどこに属すことができるのか」という孤独は誰しもあるものだと思います。

そんな彼がどのように孤独と立ち向かい、闘ってきたのか、多くの方に観て頂きたいです。

また、彼がトニーからの言葉を受け、心が救われるシーンは視聴者も救われるものがあると思います。ぜひ観て頂きたい。

 

 

 

主人公2人のことを語るだけで長くなってしまいました…

後編ではもっとピンポイントなコメントをしていきます。すごいピンポイント。既に観た方も「あ、このシーンよかったよね」と共感して頂けるかな?